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次の日、グレンは約束どおり僕と共に闘ってくれた。
「貴様は何を言ってるのだ? 使用人の分際でっ!」
義父が声を荒げる中、グレンは飄々と言いのけた。
「ではミカエル様が坊ちゃまに夜這いをかけた件を王宮に告げ口してもよいと?」
「なっなにをっ。そんなことはありえないったらありえないのだ」
「昨夜、屋敷に警備に来ていたのはただの衛兵ではありませんよ。王宮直属の近衛兵です」
「なっ? なにいぃ?」
「お忘れですか? わたしはこの屋敷の財政難を立て直すために王宮からあっせんされた執事だという事を。このまま貴方がたが坊ちゃまの養育親としてふさわしくないと判断されてもよろしいのですか」
「うぐぐ。わかった、仕方がない。ウィリアムに我が領地のひとつを任そう」
「かしこまりました。では王宮には昨夜の騒ぎは間違いだったと伝えましょう」
「ふんっ。領地経営を甘く見るなよ! お前のような子供に何ができる。ウィリアムよ。いつでもこの屋敷に戻ってきてもいいのだぞ。だがわかっておるな。戻るためには何をしなければならないのか」
ぐふふと義父がいやらしく笑う。
「わかっております。必ずや与えられた領地を豊かにしてみせましょう」
正直不安だらけだが、毅然とした態度で答えてやった。
ここで義父に隙を見せるわけにはいかなかったからだ。
今ならわかる。あの時グレンはわざと大声で叫んでくれたのだ。
僕がこの屋敷を出たくて仕方がなかった事に気づいてくれていた。
そして今もこうして僕の傍にいてくれる。頼りがいのある彼にいつしか僕は惹かれていった。
陽の光を浴びて輝く燃えるような緋色の髪。さながら太陽の精霊だ。執事服を着ていてもわかる逞しい筋肉。
でも若輩ものの僕がこの気持ちを打ち明けても、彼はきっと自分を都合のいい様に引き留めるためだと思ってしまうかもしれない。どうすれば彼にこの気持ちを打ち明けられるだろうか。このままずっと胸に秘め続けるままで終わってしまうのだろうか……。
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