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2-6
黒崎常務の挨拶の後、司会者からスタッフの紹介がされた。8人いる中の一人が枝川さんだ。短い自己紹介の後、ステージを降りていった。
タイムスケジュールの説明が始まった。これから後はオリエンテーションと黒崎製菓の概要や、進行しているプロジェクトの話を聞く。それは講義形式で、裕理君が担当する。
(仕事中の裕理君は初めてだなあ。あ、お兄ちゃんからだ……)
数分間の休憩時間に入り、スマホをチェックした。友達からのラインが入っている。その中から、久弥からのメッセージを開いた。
「オヤツを食べろよ。困った時はスタッフに声をかけろ。丁寧に話しかけろ……。お兄ちゃん……。小さい子じゃないのに……」
「どうしたの?」
「え?」
いつの間に枝川さんが近くにいた。俺が座っている席は端のほうだ。壁沿いには、さっき敬礼していた男性社員の平田さんもいる。すると、枝川さんがそばに来た。
「オヤツを食べろって?」
「あ……。聞こえてたんですね」
「休憩時間だから気にするな。お母さんからのラインか?」
「さすがに違います。兄からです。子供扱いされてて」
「仲が良いんだね。何を持ってきたんだ?」
「これだよーー」
(あ、恥ずかしいからやめておこう……)
カバンの中から取り出そうとして止めた。巾着の中にアーモンドの袋が入っている。巾着は久弥の手づくりだ。いつもの習慣で持って来たが、他の人から見ると笑えるだろう。だからとっさに誤魔化した。
「あれ?どこだったかな?」
「慌てなくてもいいよ。黒崎製菓のシャルロットだろう?」
「はははは。えーっと、電話が掛かって来たので。まだ時間ありますよね?」
「5分あるよ。通路の奥がスペースだ。案内するよ」
「平気です。さっきの説明で聞いたので」
「一緒に……」
「いえ!」
(誤魔化したのがバレてる?ここは出て行こう。すみませんでした……)
大したことではないのに、妙に恥ずかしい。笑顔で会釈すると、枝川さんも返してくれたから、そそくさと通路へ出て行った。
数分後、休憩時間が終了した。これから裕理君の時間が始まる。隣の山本さんからは、紅茶のアメを貰った。お返しに小袋入りのアーモンドを交換した。お昼ご飯を一緒に食べようね。そんな会話をした。
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