2-2

1/1
前へ
/91ページ
次へ

2-2

 人だかりが出来ている間を進んで行くと、周りから注目を浴びている子がいた。ほとんどが社員からだ。騒ぎは起きていない。 (どうしたんだろう?ああ……、綺麗な子だから?)  そこには自分よりも少し背の高い男の子がいた。明るい茶色の髪の毛に、真っ白な肌をしている。人形のように整った顔立ちに、恥ずかしそうな笑みを浮かべている。みんなから見られて、居心地が悪そうな様子だ。おずおずと、エレベーターのある方向へ歩いている。嫌な視線じゃないが、ああまで見ることもないだろう。  気になって見ていると、その先に会いたい人を見つけた。記憶の中に居る人と同じ人物だ。最後に会ったのは5年前だから、中学二年生の時だ。 「裕理君!」 「……ん?」 「理久だよ!」  俺からの呼びかけに、裕理君が振り向いた。すぐに笑顔を返してくれた。そして、そばに立って向かい合った。俺の背が伸びたことで、目線が近くなって嬉しい。裕理君が俺を見て驚いている。 「大きくなったね。インターンシップの参加をする年か……」 「それだけ裕理君が年を取った証拠だよ。……ねえ?ジロジロ見られている子がいるんだ」 「ここの関係者の息子だ。いい経験をするために参加するんだよ」 「そうなんだ……。親に言われて無理やりかな?俺みたいに拒否できなかったのかな?」 「そういうわけじゃ……」 「声を掛けるよ。二人いればジロジロ見られにくいし。みんなから見られてかわいそうだよ」  裕理君にそう伝えると、自分が行くと言い出した。そして、会場で会おうと言い、男の子の元へ行った。彼が顔を赤くして小さくなっている。裕理君がそばへ行き声を掛けると、社員達が会釈をしつつ道を開けていた。見られなくなったようだ。 (よかった。それにしても、かっこいい子だなあ……。あ……)  ホッとして見ていると、今度は俺の方が声を掛けられた。さっきの男性が立っていた。 「よかった、間に合った。一緒に行こう」 「は、はい!」  電話を終えたようだ。受付は再び混雑が始まった。断る事もないから連れて行ってもらおう。しかし、こういうところも直したいと思った。やっぱり断ろうと思った。 「ありがとうございます。トイレに行って来ます。失礼します」 「向こうのトイレは混雑している。二階の社員用を使うといい。はい、行こう」 「いえ、お構いなく」 「気を悪くした?変な事を聞いたからだろう」 「違います!」 「そう?」 (ああ……。世話をかける。トイレに行きたいのはホントなんだよなー。混んでるよね)  向こうは何人も立っている。寒いし会場に入る前に使いたいだろう。ここは割り切って頼ろうと思った。 「遠慮なく。俺が一緒なら怪しまれないぞ」 「ありがとうございます」 「奥の階段を使う。どうぞ」 「はい」    男性から促されつつ、奥の階段へ向かった。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

115人が本棚に入れています
本棚に追加