1・クリスマスイブ。街の雑踏

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「痛っ!」    私は街の雑踏で、声を上げた。  頭皮に痛みが走った。   「ああ、ごめんっ……」  男性の声がしたかと思ったら、すぐに彼は私に歩み寄り、痛みも揺らぐ。  見れば、私の髪の毛が、その男性の紺色のコートのボタンに絡まっていた。 「ちょ待って。今、ほぐすから……」  悪いのは相手じゃない。私だ。  綺麗に編んだ髪を勢い任せで振りほどいたところで、彼とぶつかってしまった。  クリスマスイブ。街の雑踏。  行き交うカップルに憤怒しながら闊歩していたから、彼に絡みついてしまった。 「ああもう、うまく取れない。ごめんな」  彼は私の髪と、自分のボタンと格闘しながら言ってくる。
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