つよがり

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「あ、あぁ、ッ…!」 「…っ」 何度も抱き合って果てて倒れ込んでくる愛しい重みに。 その背をぎゅっと抱きしめる。 この瞬間だけは、わたし一人の恋人。 「…!?」 顔を上げてわたしの顔を見た昴はぎょっとした。 「泣いて…? わりぃ。強引すぎた?」 「…違うよ。幸せで泣けたの」 「幸せで…?」 時計を見ると日付が変わっていた。 「昴、誕生日おめでとう」 「え! 俺、誕生日か」 「やっぱり忘れてた! もういろいろ準備してたのに…」 「もしかして下着も…?」 ストレートに聞かれて恥ずかしくなる。 「……引いちゃった?」 「そんなわけねーから!」 「良かったぁ…。もう着ないし勇気出して良かった」 「え、なんで…」 「恥ずかしいもん」 「恥ずかしいのに着てくれたのか」 「お誕生日感、出したくて…考えた結果です」 「……っ。嬉しいけど、深月の時のハードル上がるじゃねぇか」 「わたしの時? いいよ。何もいらない」 わたしがあっさりそう言い切ると昴は驚く。 「そういうわけには… 深月に欲がないのは知ってるけど」 「律儀だよね。わたしは、ずっと昴といられたらそれでいいの」 「……」 今だけを見て生きるんだ。そう決めた。 「今日はもうできないけど明日昴の好きなクリームシチュー作るね」 わたしがそういうと昴は何か考え込んでる。 「誕生日にほしいもの言っていい?」 「ほしいもの? …わたしのお給料で買えるやつ?」 「ほしいっつーか…なりたいっつーか」 「なにそれ?」 「俺を深月の旦那にしてくれ!」 「え、えぇえええ!?」 深夜にわたしの声が響き渡ったのは…言うまでもなく、 プレゼントをあげるつもりが頂けるようで。 「う、嘘でしょ…」 「嘘じゃねーし。…俺も深月がほしい」 恥ずかしいのか目を合わせてくれない。 「旦那さんになってくれるの?」 「…むしろしてくれ」 「それじゃ独り占めしていいの?」 「したいんだ?」 「うん…」
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