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翌日、ローランが、ベッドを出て窓を開けると、隣家のカシンがすでに幌馬車の用意をしていた。
「おはよう、ローラン。さあ行こうか」
昼前には、軍の『帰還兵士管理事務所』に着いた。
事務所員は、白い荒地の野戦病院に撤退部隊を派遣したが、音信不通であると言うのみだった。
「直接行くしかないか……」
御者台に座るなりカシンは、つぶやく。
「私も一緒にいきます!」
カシンの腕を掴んで叫ぶように言うローラン。
「それは、無理だ。お前は家で待っていなさい」
「大丈夫です! 心はもう白い荒地です」
ローランの意思の固さに、カシンは同行を許さざるを得なかった。
馬車は、白い荒地を目指して北へと向かった。
途中何度か、帰還兵を見かけた。どの兵も、足を引きずっていたり、腕が動かなかったりしている。あれは、石化の影響なのだとカシンがささやいた。
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