白い荒地から来た手紙

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白い荒地も間近に迫った頃だった。 道端で白い竜が、数人の男たちに囲まれて、暴行されていた。 「カシンさん、あれ、見て下さい!」 男が、白竜を蹴っている。 「お前は、キアラの仲間だろう! 俺の村の人間が大勢殺された! 許せねえ!」 白い竜を足蹴にする男たち。 「いかん! 殺されてしまう。ローランそこの(つえ)を取ってくれ」 馬車を止めると、老人とも思えぬ身のこなしで、馬車から飛び降りるカシン。ローランは、荷台にあるカシンの身長ほどの杖を握ったが、 「カシンさん! この杖重い! 持ち上がりません」 見た目は竹の杖なのに。 「そうか。私が取る」 カシンは、杖を軽々と持ちあげた。不思議がるローランを後にして、カシンは一団に向かって行く。 「お前さん方、もう止めておいたほうがいい」 カシンが、うずくまっている白竜の前に立つ。 「何だこのジジイ、邪魔するんじゃねえ。そいつは、魔物だ。俺たちの村の仲間が、大勢殺された」 体の大きい男が(こぶし)を振りあげて、カシンを威嚇(いかく)する。 「ち、ちがう。僕は、白い竜騎士団と一緒に戦った」 白竜は、人間の言葉を喋ることができる。顔を上げた白竜の目は、黒い石と化していた。 「ほれ見ろあの目を。化け物だ!」 男は、また白竜を蹴ろうとした。カシンは、素早く杖先で男の(すね)を突く。 「ぎゃ!」 杖の一撃で大の男が、苦悶の表情で倒れた。血気(けっき)にはやった男たちが、カシンに襲い掛かる。長い杖を縦横無尽に(あやつ)って、カシンは確実に男たちの急所を突いたり、打ち払ったりする。ローランにはカシンが杖を持って舞っているように見えた。 「カ、カシンさんて何者?」 誰一人としてカシンに触る事さえできないのだ。男たちは、急所を押さえながら()()りに去って行った。
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