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カーテンを通り越した十二月の朝日が、窓枠からはみ出て多角形に似た模様を作る。まだ部屋を満たしている冷たさに、俺は布団を首元まで引き上げた。
結婚してからというもの、休日の朝は大抵そんな風に始まる。
心地よい気候に寝返りをうつか、少しの蒸し暑さに夏布団を下げるか、季節によってそのくらいの違い。
意識が浮き沈みを繰り返して部屋が薄明かりに包まれた頃、花織が身じろぐ気配がした。愛用しているスウェットと布団が擦れる音がする。ひとつ、ふたつ、みっつ、と断続的に耳に入る音は小さく、けれど明け方の静かな空間にはよく響いた。
別にいいのに。
水面を漂う意識でぼんやり思うそれは、いつも言葉にならずに眠りに溶けて消えていく。あれはたぶん、俺を起こさないよう気をつかっている。俺が先に起きていた時は、あるいは俺が寝ていることに気づいていない時は、何だか口の中で音を発している。うつ伏せになって、上半身は起こさないまま膝を引き寄せて足だけ正座をしてみたり、仰向けになって両腕を頭の方へ突きあげてみたり。
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