あなたとならば

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 玄関まで出て挨拶すべきかと迷っていた私の耳に届いたのは。 「お母さん、なんかこの家いい匂いしない?」 「ん? あら、ホントだ。芳香剤でも置いたの? 花みたいないい匂いするわ」 「あれ? これ、誰の靴だ? お客さんでも来てるのかい?」  シーンと静まり返った玄関にゴクンと唾を飲み込んだ次の瞬間。 「う、うわ、待てって、すず!」  ハルちゃんの慌てるような声、そして小さな足音がパタパタと近づいてきてリビングの扉をガチャリと開けた音。  振り返ると小さなお顔が不思議そうに私を見上げている。 「あ、あの、こんにちは? すずちゃん、だよね? 私、」 「お母さん~! お兄ちゃんの彼女がいるよ!」 「彼女⁉」 「おお、彼女できたのか、晴彦!」  妹さんの後ろから、ハルちゃんによく似た顔のお母さんと、優しそうなお父さんが続く。   「見せもんでねえからな! ごめんね、ナツ!」 「ナツ? え? 夏海(なつみ)ちゃん? もしかして坂下夏海ちゃんなのかい?」  お母さんの驚くような声に、私はコクコクと頷く。  なんで、私の名前を知って……?
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