LonglongTimes

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避難先の空き家を準備してるが、ここからまだ少し歩く」 「だいじょうぶ! みんな歩くよ。助かるためなんだから。 気力で動くよ」 「そう言うおまえこそ、気力だけで動いてるだろ。 もう休め。後は任せろ」 クリはぷうっと頬をふくらませて、ユウヒを睨みつける。 「オレには、まだ助けなきゃいけない人がいるんだ」 「ここの村人以外にか?」 ユウヒの切り返しに、クリは一瞬言葉が詰まった顔になる。 そんな2人に、遠くから女性の声が届く。 「ユウヒ!お待たせ。 受け入れの準備も整ったわ。 さ、早く移動しましょ」 やって来た女性は、アサヒやユウヒと同じく武装していて。 また見た目も、ふわりと明るい髪と瞳で顔立ちも似ている。 「マヒル、水と食料を配ってくれ。 弱ってるのは、そのまま荷台に乗せろ。 これから天気が崩れるらしい。急ごう」 「天気?」 不思議そうな表情で、マヒルは空を見上げる。 クリは、緊張を落ち着かせようと。 深呼吸をする。 (気を付けなくちゃ。ちょっとした言葉で気付かれちゃう) 「すごいね。クリちゃん。 文字が書けるなんて、助かるわあ。 この名簿があれば。 みんなの避難先がバラバラになっても、見落とさずに済むね」 ぎこちない文字が並ぶ紙束を眺めて、マヒルが笑顔になる。 クリも得意そうだ。
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