青い薔薇の咲く場所で

4/36

37人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
「お前は俺が貰ったんだ。勝手に席を立つな」 変わらない表情で言われ、歩き始めた隊長の後ろについて宴の席へ戻るのかと俯いていたが中庭に出てゆき白いガゼボの中へ進む。 白いガーデンテーブルセットにケーキスタンドが用意されていて、騎士が椅子を引いて俺を見るので俺は戸惑ったが椅子に座れば騎士も反対側へ座り紅茶を注いでくれた。 「俺の名はギルベルト・ハイゼンシュタイン。お前の名は」 そう尋ねられ、口を開いたが俯いて視線を逸らす。変わらない表情に、呆れられたかと思っていたがギルは立ち上がり俺の隣に立ち手を取ったかと思えば文字を書き始めた。 『耳が聞こえないのか』 その言葉に首を振り、恐る恐るギルの手を取る。俺の手よりごつくて男らしい手…その手を見つめていればするりと手が俺の手からすり抜けて頬に触れられた。 「喋れないのか」 目を細められ、その手に頷くように擦り寄った。そのまま顔が近付き俺の唇が初めて人の唇と重ねられた。少し酒の味がして、口が離されればお互い無言で見つめ合った。 顔が熱い…俺は生まれて初めて【キス】をした。これは戯れなのだろうかそれとも俺を嘲笑う為の行為なのだろうか…?俺には理解しかねる行為に少し視線をそらせば顎を掴まれクイと目を合わせられた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加