【最後のトマト】

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 心臓が早鐘を打つ。  春の夜の心地よい風が「冷静になれよ」と言わんばかりに頬を叩く。  ナツイの左腕についてる時計をチラチラと確認する。  約束の時間まであと五分。 「あ」  黒い影が視界に入った。  その影が、ひとつふたつと増えていく。 「よぉ」    まず廉がいて、ナツイとハイタッチをした。 「ナツイ! 久しぶりだね」  その後ろから茉季が来て、その隣、桃香もいた。 「ナツイ! 彩果! 久しぶりー」  そして桃香は私に抱きついてきた。  一瞬不安になってその後ろを見たけど、詠美の姿はなかった。 「ごめん、彩果。そんなことになってたなんて全然知らなくて」 「彩果、言ってよね、親友なのに、言ってよ」  ふたりの言葉が嬉しくてくすぐったくて下を向いた。涙が込み上げてきたこと、気づかれたくなかった。
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