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と褒めると、桃華は静かに微笑んで自分も箸を手に取った。そういえば、桃華も夕飯を食べていなかったんだな、と思った。
飲んだ後のお茶漬けは沁みるおいしさだった。やっぱり桃華は妻として完璧だ。
♢♢♢♢♢
クリスマスの日、桃華が滑って転んだ拍子にテーブルの縁に頭をぶつけた。病院に連れて行こうかと聞いたが、桃華がひとりで大丈夫だと言ったので、いつもどおり会社に出勤した。
――あれっ……?
美姫が右足に包帯を巻いていた。
「どうした?」
「課長! 聞いてくださいよ、通勤でバス待ちしていたら、押されて転んじゃったんですよ」
「美姫が美人だから嫉妬されたんじゃないか?」
「そうだとしても、いい迷惑だわ」
美姫はツンケン言った。俺は席にもどり、通信アプリを開いて、メッセージを送った。
「その足じゃ、ディナーは延期した方がいいだろうな?」
「大丈夫、せっかくのディナーだから、行くわ」
本人が行くというのなら、仕方ない。終業後、ホテルのレストランで落ち合う。途中で右足の怪我が痛み出したというので、食事を早めに切り上げた。美姫にタクシー代を手渡し、俺は徒歩で家に帰る。
「おっと、家に帰る前にコンビニに寄らなけりゃ」
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