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マンションの一階のコンビニに寄ると、店長がすぐに近寄ってきた。
「あの、奥さん大丈夫ですか?」
「大丈夫とは?」
聞き返したものの、そういえば、桃華は出がけに頭を打ったなあと思い出した。桃華に病院に行けと言ったが、どうしただろうか?
「ああ! いや、まだ家に帰っていないので、どうかな?」
「あ、いえ、それなら別に……」
店長が口ごもる。変な態度だと思ったが、まあ、店長の態度からすると、おおかた桃華が頭に包帯を巻いているところを見たのだろう。説明をするのは面倒なので、予約したクリスマスケーキとチキンを受け取り、会計を済ませた。
エレベーターで家がある階まで上がる。ドアが開くときに、自分の家の玄関を覗いてしまう。誰もいない。
ふう、と息をついた。
待たれているというのはものすごく負担に感じるものだ。浮気をしている場合は特に。
エレベーターから降りた時、玄関ドアがしまったのを目撃してから数日が過ぎ、俺はなんとなく桃華がエレベーターを見ていたからだと思うようになっていた。
その根拠は玄関の鍵だ。いつもは鍵がかかっているのに、あの日はかかっていなかった。
俺は鍵を差し込み回す。鍵はかかっていないようだ。しかしドアはずっと閉まっていたような気がする。
――おかしいな……
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