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今日は桃華はエレベーターを見ていなかった……はずだ。不用心だな、と思いながら、靴を脱ぎ部屋に入る。
「桃華ー。いるんだろ? ただいまー」
テーブルの上には手つかずの料理がある。
「作るなっていったのに」と呟く。「桃華ー! なに隠れているんだよ」そう言いながら、部屋を見て回る。と言っても、部屋は3つしかない。そのほかにはトイレと浴室だ。
「あれ? いない」
もう一度、家じゅうを見て回ると、クローゼットが細く開いていて、光がもれている。覗くと小さなモニターが置いてあった。
「なんでこんなところに……?」
モニターをのぞくと、美姫が映っていた。
――監視カメラ……?
美姫の部屋なのだろう。服やバッグが床に散らばっていて、頭から血を流して倒れている。
「うわっ! 大丈夫か、美姫!」
画面に向かって叫んだが、もちろん声が届くはずはない。俺は玄関に向かって走り、靴を履いた。
廊下に飛び出すと、ちょうどエレベーターの扉が開いた。
「あら。聡志さん」
嬉しそうに桃華が俺に笑いかけた。笑うと可愛いんだよな、といつも通り考えている。
「頭の傷大丈夫か?」
「うん、平気。お医者さんに行って、診てもらったから」
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