異世界召喚されましたが、日本が恋しいので帰りたい

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異世界召喚されましたが、日本が恋しいので帰りたい

「俺様の剣をくらえ!!」 「ふっ、これぐらいでこの(わたくし)に、四天王のアージュに勝てるとでも?」  そういって緑の髪に同じ色の瞳をしたアージュという女性、なかなか綺麗な女性に剣を振るったのは鈴木竜也(すずき たつや)という赤茶色の髪に黒い瞳を持つ剣聖だった。一応は賢者である僕の仲間であり、優秀な剣の使い手でもあった。今の彼は魔王の四天王という最後の女性を追い詰めていた、四天王のアージュという女性は右手に持った剣で竜也と戦っていたが、剣聖というだけあって竜也は強かったからあと少しで勝てそうだった。 「翔太!! すぐに回復魔法を使うわ!! 『完全なる(パーフェクト)癒し(ヒーリング)の光(シャイン)』!!」 「ああ、ありがとう。春香」  最初にこの四天王のアージュと戦った勇者、金の髪に蒼い瞳を持つ遠山翔太(とおやま しょうた)は、四天王のアージュと戦いつつ雑魚の相手もしていた、だから少し油断して右手に深い傷を負った。それで翔太の代わりに竜也が今は四天王のアージュの相手をしていた、そして聖女である長い黒髪に黒い瞳を持つ片山春香(かたやま はるか)から、翔太は傷を治して貰ってすぐに竜也と共にアージュという女性に襲いかかった。 「おのれ、この(わたくし)をここまで追い詰めるとは――!? 魔王様、お許しください!!」 「…………本当に申し訳ないです、『火炎球(フレイムボール)』」  翔太と竜也が四天王のアージュと戦って弱らせて、しかも時間を稼いでくれたおかげで僕、黒髪に黒い瞳で賢者である清水亮(しみず りょう)は余裕をもって火炎の中級魔法が使えた。四天王のアージュという魔族は僅かな灰だけを残して消えてしまった、そうしたら僕は勇者である翔太と剣聖である竜也からいきなり怒鳴られた、竜也から僕は胸ぐらをつかまれて乱暴に体を揺さぶられた。 「おいこら!! くそ賢者さまよ!! 俺様はまだあの女の味見をしていねぇ!!」 「そうだぞ、亮!! 彼女は美しい女性だったのに、俺のものにならないなんて勿体ないだろう!!」 「…………ごめん、魔法の手加減を間違った」  僕は勇者である翔太と剣聖である竜也から責められて、いつもどおりに魔法の手加減を間違ったことにした。そうして謝っておかないと二人の機嫌が悪くなるからだった、でも僕は自分がやったことは後悔していなかった、魔族の女性はあのままだと死ぬまで翔太と竜也の性的な玩具にされたはずだったからだ。ただでさえ何の罪を犯したのか分からない魔族を殺すのは気が重いのに、それに加えて傷ついた女性さえ凌辱するという仲間の方が僕は本当は恐ろしかった。 「まぁまぁ、翔太に竜也。今夜も私が相手をするわ、それとも春香のことはもう嫌い?」 「俺様は嫌いじゃねぇぜ、でも翔太と三人でヤルのは気に入らねぇ」 「そうだな、竜也。後で戦って春香の今夜の相手を決めよう」  勇者である翔太と剣聖である竜也、それに聖女である春香は性的関係にあった。春香はそれなりに顔が整った男性なら誰でもいいという女性で、それで翔太と竜也の二人と気紛れにSEXしていた。ちなみに春香から僕も誘われたことはあったが、恋愛感情がない女性とはしたくなかった。そんなわけで勇者である翔太と剣聖である竜也が戦って、そうして春香の今夜の相手を決めるのもいつもどおりだった。  ちなみに負けた方は大抵はさっさとふて寝してしまい、結局いつも僕が夜の見張りをすることになるのだ。僕はどうしてこんな旅に出ることになったのか、そうこの異世界に来て最初のことを思い返してみた。僕にとっては思い出したくもない忌まわしい記憶だ、僕は異世界召喚されたが故郷である日本のことが恋しくてたまらなかった、そんな僕が異世界に来て一番最初の記憶は確かこうだった。 「おお、召喚されし四人の勇気にあふれる者。どうか魔王を倒して、我が国をお救いください」  僕ら四人はカルム王国という場所にある日突然に勇者召喚された、本当なら僕たちはただの十七歳の高校性だった。そんな僕らはこの異世界オペラシオンに召喚されたのだ、カルム王国の銀の髪に蒼い瞳を持つ美しい王女のカノンという女性、彼女が僕らを召喚する魔法を使ったのだ。なんでもそれは王女や多くの魔法使いの一生分の魔力を捧げて、そして僕らのような異世界人を呼び出す魔法らしかった。 「よく分からないが皆落ち着いて、まずはこの国の話を聞いてみよう」 「そうか、そうだな。まず敵を知らねぇと、俺様も戦えねぇしな」 「どうしても魔王を倒さなきゃいけないのかしら、私は生き物を殺すのは嫌いよ」 「ぼっ、僕は日本に帰りたい。どうすれば日本に帰れるんですか?」  勇者である翔太は大会社の社長の息子で成績も運動も一番にできるという男性だった。剣聖である竜也はいくつかの格闘技をしていて有名な男性だった、聖女である春香は美しくて校内や校外を問わず男性に人気のある女性だった。でも僕、清水亮はごく平凡などこにでもいる高校生だった、勉強も運動もほどほどにできるというだけの生徒だった。 「おお、皆さまには勇者、剣聖、賢者、聖女の適正がございます。どうか我が国を脅かすフォルトゥーナ国の魔王を倒してください、無事に魔王を討伐された暁にはこのカルム王国の第一王女カノンと、どなたかが結婚してくださいませ」 「困っている人を助けるのは当然だな」 「俺様の敵っていうのは、その魔王って奴だな」 「二人がそう言うんじゃ仕方ないわね」 「いや、僕は日本に帰りたいんだけど……」  だから異世界に他の三人と呼ばれた時には混乱したし、何よりも早く僕は元の世界に帰りたかった。数日遅れただけで授業はかなり進んでしまうし、それに勉強ができず良い成績で高校を卒業できなければ、日本という国では将来がかなり厳しくなるというのもあった。だから最初のうちは長くても一年くらいで帰れると思っていた、それが魔王を倒すためだけにもう五年も経っていた。 「あとは魔王を倒せれば帰れる、やっと日本に帰れるのか。五年のブランクは辛いな、しばらく何も勉強してない。まずは高卒認定試験に合格してからバイトして、大学には予備校に通って入学試験を受けるしかないか……」  そうやって日本に帰ってからのことを僕は考えていた、今日は翔太が勝負に勝ったらしく春香の嬌声が煩かった。僕はうつらうつらしながら夜の見張りをしていた、でもこの世界の魔族は奇襲をすることを好まなかった。魔族にはどうせ強者である敵と戦うなら正々堂々と、そう胸を張って勝利したと言いたいという者が多かった、魔族の方が人間よりもずっと誠実で正直な生き物に見えた。そんなことを考えている僕に、竜也が村を襲おうなどと軽く言ってきた。 「おい、くそ賢者!! 女がいねぇと眠れねぇ、そこらの村でも襲いに行こうぜ」 「僕は勇者と聖女の見張りをしないと、行きたいなら一人で行ってください」  僕は余計な殺しはしたくなかったから竜也の誘いを断った、僕たちはこれまで数え切れないほどの魔族を殺してきた、相手もこっちを殺す気だったなら仕方がないのかもしれなかった。でも翔太も竜也も女性である春香でさえ、僕たちを殺しに来た魔族を甚振って殺すのが大好きになった。僕たちは魔王を倒せばいいだけなのに、今の竜也のように皆は本当に罪があるのか分からない、そんな魔族の村や街を襲うのを楽しみにするようになった。 「チッ、つまんねぇ男だな。まぁ、いい。俺様だけで村を襲ってくる」 「明日の朝にはここを出発します、それまでに戻ってきてください」  最初の頃はこんなに皆も荒んだ性格はしていなかった、翔太はリーダーとして皆の雰囲気を良くしようとしていた。竜也も俺様がいるから安心しろと皆を励ましてくれた、春香も皆の傷は全て私が必ず癒しますと言った優しい女性だった。それが皆が今では色欲と征服欲の虜だった、異世界というものに馴染んでしまったのか、彼らは弱者を蹂躙するのを楽しみにするようになった。今夜も竜也が春香を抱けなかった腹いせに、近くにある魔族の村を襲うようだった。 「魔王を殺して手に入る魔石で日本に帰れる、そう聞いたけどこれも怪しい話なんだよな。僕は本当に日本に帰れるんだろうか、それに帰ってから日本の普通の生活に戻れるかな」  僕たちを召喚したカルム王国の王女カノン、銀の髪に蒼い瞳を持つ美しい王女はそう言っていた。他のカルム王国の人間も口をそろえて魔王を倒せば日本に帰れると言った、僕たちが日本に帰るためには魔王を倒してみるしかなかった。それがもしカルム王国の嘘だったとしても、とりあえず僕たちは魔王を倒す旅に出るしかなかった。この世界の常識が分からなかった僕たちは、その時はカルム王国の言う通りに動くことしかできなかったのだ。  僕は魔王を倒すためにいろんな魔法を教えられた、魔法と僕は相性が良くて次々と魔法を覚えていった。それに魔力というものは生まれつき決まっているそうだが、僕はその魔力が異常に多くどんな魔法でも使えたし、魔力切れというものを起こしたことがなかった。でも僕は最初は熱心に魔法を勉強したが、途中から手を抜いてみせるようになった、このカルム王国が信用できなかったからだ。力を身につけても上手く隠すことを僕は覚えた、わざと勉強をサボるようなふりもした。  そうして僕は中級魔法までしか覚えていない、そんな力が足りない駄目な賢者のふりをした。そうしておけば他の三人も僕を下に見るようになった、カルム王国の関係者も今回の賢者は外れかと陰口を言っていた。でもそうやって下の世界から上を見るほうが物事がよく見えた、どうも僕たちを召喚したカルム王国の言っていることは怪しかった、だから僕は今でも魔王を倒せれば日本に帰れるという話を懐疑的に思っていた。 「われはブランシュ、このフォルトゥーナ国の魔王である」  そしてとうとう僕たちは魔王の居城の謁見の間まで辿り着いた、そこには腰まである長い白い髪と金色の瞳をした美しい女性の魔王がいた。ブランシュと名乗った美しい女性である魔王を見て、翔太と竜也が獲物を見つけたとばかりに息を呑んだ、春香はそれを見て面白くなさそうな顔をした。翔太と竜也はいつものようにこの魔王を倒し、そして動けなくしてから性的に凌辱するつもりらしかった。でも僕はずっと聞いてみたいと思っていたことがあった、それを戦う前にブランシュという魔王に聞いてみたかった。 「『重力(グラビティ)』、『沈黙(サイレンス)』、それに『衰弱(ウィークネス)』」  だから僕はまず仲間の三人に重力の魔法をかけて動けなくして、次に沈黙の魔法で会話の邪魔をさせないようにした、そしてもし重力に耐えていきなり動き出さないように衰弱の魔法もかけておいた。僕が真っ先に自分の仲間を攻撃したことに、まぁ当然だが仲間である三人は驚いていた、敵として現れた魔王のブランシュでさえ僕の行動に驚いていた。僕としてはこれは必要な行動だった、この世界で本当に正しい者が誰なのか知っておきたかった。 「魔王ブランシュ、突然の訪問をお詫びします。そしてどうしてもお聞きしておきたいのですが、貴女を殺してその体内の魔石を使えば異世界に渡れるという、その話は本当のことでしょうか?」 「ふむ、異世界から来た賢者よ。面白いからわれも魂に誓って正直に答えてやろう。それは無理な話じゃ、われ程度の魔族の魔石では異世界には帰れん」 「ではどうすれば僕は異世界に、故郷である日本に帰れるでしょうか?」 「教えてやっても構わんが、その代償が欲しいのう」  そう言って魔王は僕の三人の仲間を見た、僕たちは沢山の魔族を殺めてきた、それも最近ではほとんど面白半分に殺めてきた。だから魔族から憎まれ殺されてもおかしくなかった、僕は日本に帰れる情報と仲間たちの命を天秤にかけた。そうしてしばらく僕は仲間についてよく考えてみたが、日本に帰れる方法があることだけは分かった。だったら彼らを僕が殺すのは可哀そうだった、だから僕は魔法を解除して魔王ブランシュへと話しかけた。 「日本に帰れるという可能性を教えてくださり、本当にありがとうございます。僕は魔王討伐を諦めますので、あとはこの三人とご自由に戦ってください」 「それでは、こうじゃ。『抱かれよ(エンブレイス)煉獄(ヘル)の火炎(フレイム)』」  僕が魔法を解いたとたんに翔太や竜也は戦闘態勢をとった、春香も油断せずに魔王に立ち向かっていた。でも魔王が魔法一つ使ったら本当にあっけなく決着はついた、僕の三人の元仲間たちはあっという間に火炎の上級魔法に焼かれて灰になった。僕はその様子を見ていて実はスッキリした気持ちになった、もう三人の仲間という名の主人にこき使われることはなくなったからだ。この世界にきて初めて僕は自由になった、そう自由になることができたのだった。 「慈悲深く寛大な魔王さまに、僕は心から感謝致します」 「ふっ、われは寛大なのではない。そなたはあまりにも魔力が高く強い、そなたと戦えばわれが殺されると分かっておるだけじゃ」 「それでも今まで罪もない魔族を沢山殺した僕を、そんな罪深い僕を見逃してくれることに感謝致します」 「我ら魔族は強い者と正々堂々と戦うのが好きじゃ、そなたとなら戦った者もきっと満足しておろう、あまり自分を責めることなどはないぞ」 「ありがとうございます、それでは失礼致します」 「うむ、久しぶりにわれは強者に会えた。それも幸運なことにわれの敵ではなかった、また何かあったら訪ねてくるがよい」  そして僕は用が済んだので魔王城から帰ろうとした、僕は魔王に対して深く一礼すると『飛翔(フライ)』の魔法を使って魔王城から飛び立った、かなりの速さで開いていた窓から空へと飛び出したのだ。そうやってしばらく空を飛ぶとカルム王国に辿り着いた、僕が自由になってからはじめにしたいことは決まっていた。僕に嘘を言って沢山の罪もない魔族を殺させた、僕はそんな王族たちに復讐をしておくことにした。 「ただいま帰りました、国王陛下。そして王妃様、並びに王族の方々」 「おお、勇者一行の賢者が帰ってきた!! して魔王は倒せたのか!?」 「魔王は僕に敵いませんでした、そして貴方たちは僕に嘘を言いましたね。魔王の体内にある魔石では日本に帰れない、なのに嘘を言って僕に沢山の罪もない魔族を殺させました」 「なっ、何を言う賢者よ。魔王を倒したならそれで良いではないか、もうこちらの世界の方がそなたも好きであろう?」  僕は王族が集まっている謁見の間に帰ってきていた、そして嘘をついたことを王族に問いただしたが、向こうは僕に対して悪いとも思っていなかった。そしてカルム王国の王女カノン、銀の髪に蒼い瞳を持つ美しい王女は僕を見て頬を染めていた。そういえば魔王を倒して帰ってきたら、勇者一行の誰かがこの王女と結婚するはずだった。カノンという王女の瞳が僕を見つめているのが分かった、でも僕にとってはそれもどうでもいいことだった。 「リョウさま、どうか私と結婚を……」 「そんなことしたいわけないだろ!! 僕は日本に帰りたいんだ!!」  僕は生まれてはじめて怒りで目の前が真っ赤になった、こんなに人が憎いを思うのは初めてだった。翔太や竜也それに春香にこき使われていた時、そんな時でさえこんな怒りは感じなかった。僕は魔族の大量殺戮者になってしまった、知らないことだったとはいえ罪もない魔族を沢山殺してしまったのだ。それなのにそんな僕に図々しく結婚をせまる、そんな勝手な王女も王族も僕は大嫌いだった、こいつらのせいで僕は平凡な日本での安全な暮らしを奪われたのだ。 「今こそ魔族の苦しみを知るといい、『抱かれよ(エンブレイス)煉獄(ヘル)の火炎(フレイム)』」  僕に嘘をついた王族たちに僕は火炎の上級魔法を使った、その魔法は範囲は広く効果はわざと落として使った。王族たちは僕の魔法で死なない程度に体が丸焼けになった、重度の火傷を負って彼らは苦しみもがいた。そして彼らを助けようとする兵士たちにも同じ魔法を使った、僕を騙した国の連中に手加減をしてやる気はなかった、今まで何の罪もない魔族たちも同じように死んでいった。これで僕に殺された魔族が喜ぶとは思わない、でも僕はどうしてもこの卑怯な王族たちが許せなかった。 「ぎゃあぁぁぁ、痛い、痛い」 「水を……、水をくれぇ……」 「私の美しい顔がぁ!?」 「熱い、苦しい」 「だっ、誰か助けてくれぇ」  僕は彼らが確実に苦しんで死ぬように魔法を使った、今まで使えることを隠していた上級の攻撃魔法で残酷に彼らを殺していった、やがて僕を騙した者たちは全て死んでしまった。僕はこのカルム王国を全て滅ぼしたって良かった、でもカルム王国に住んでいるほとんどの人々は、勇者を純粋に正義の味方だと信じていた。彼らも王族に騙された被害者に過ぎなかった、だから僕の復讐は王族だけで止めておくことにした、そうして僕は自由になったからしたいことができるようになった。 「日本に帰る方法はあるんだ、ブランシュは教えてくれなかったけど、旅にでも出て探してみよう。もし見つからなかった時には、図々しいけどブランシュにどうにか頼んで教えて貰おう」  僕は旅に出る前にカルム王国の宝物庫から、そう迷惑料として金貨や銀貨をいっぱい貰ってきた。そして『魔法(マジック)の箱(ボックス)』にそれらを全て入れておいた、それはこれからの旅に必要な物だった。他にも宝石や聖剣などの『魔法の道具(マジックアイテム)』もあったが、あらゆる魔法が使える賢者の僕には必要がないので置いてきた。僕が欲しい物は元の世界にしかなかった、だから僕は何としてでも日本に帰りたかった。  それはこの異世界にはまだ無いものだった、今から作られるかもしれないが何百年もの時が必要だった。それが無い生活は不便で、僕はいっつも困っていたものだ。もう僕が日本に帰れるのは何十年後になるか分からない、でもいつか日本に帰ってそれを普通に使う日常に戻りたかった。そうなんでもないただの日常、それこそが僕の欲しかったものだった。僕が欲しかった物を使う時は気持ちが良かった、この異世界に来るまではそれが当然の物だと僕は思っていた。 「さぁ、早くウォシュレットが使える日本に帰りたいな」  僕は日本に帰る第一目標であることを呟いた、誰もそれを聞いている者はいなかった。いや聞いている者がいなくて良かったに違いない、こんな小さな願いごとで殺された魔族が可哀そうだった。カルム王国の王族である彼ら自身の自業自得とはいえ、僕に滅ぼされたカルム王国の王族も気の毒だった。そう僕は本当にごくごく普通の日本人で、文明の利器を普通に利用したい、ただそれだけの平凡な人間だったのだ。
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