第一章 都のはずれ

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 自由業のてっちゃんは時間にルーズ。仕事仲間からは、徹舟先生ならしょうがないという感じで何時も許してもらっている。でも、わたしはそんな甘やかしたりしない。生姜焼きの横にメモまでおいてきたのだから。  放課後の教室では十月の文化祭で上演する、英語劇の立ち稽古が行われていた。受験生だけれど文化系の三年生は、この文化祭が終わってから引退となる。  上級生の三年生は劇の中心となり役付きになるのが普通だ。しかし衣装係になったわたしは、英語劇だというのに緋色の袴を繕っていた。 「普通英語劇って()うたら、演目は洋物やろ。なんで毎年、源氏物語なん?」  わたしと同じ三年生のあおいちゃんが、顧問の先生に聞こえない程度の声でぼやいた。あおいちゃんに役はついているが、出番が少ないので手伝ってもらっている。  この英語部は下級生が少なく、存続が危ぶまれている部なのだ。 「しゃあないやん。毎年源氏の英語劇するのがこの部の伝統なんやって」  同じくお手伝いのあーちゃんが、軽くあしらう。
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