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今年の演目は幼い紫の君を源氏が引きとって育てる、若紫の帖を中心に台本が書かれている。今まさに黒板の前に設えられた舞台で、高身長イケメン女子、雲井さんが源氏に扮していた。
対する紫の君は、奇跡のベビーフェイス男子霧山くんがかわいらしい声で「Inuki let a sparrow go.」そう言って目をこすっていた。泣く演技も様になっている。
ちなみに二人は家がお隣さんの幼馴染なので、息もぴったりである。毎年代わり映えしない源氏物語という演目に、今年は男女逆転というひねった要素が投入されている。
目新しさというよりも、脚本を書いた部長の趣味を反映しているのだと思う。
「光源氏って絶対ロリコンやんな。十歳の紫の君を拉致って自分の理想の女にしようなんて、ギャルゲーにはまるロリオタといっしょやし」
あおいちゃんは、針仕事にあきて光り輝くイケメン源氏をディスり出した。
そうだよね。わたしもそう思う。でも、日本文学史上燦然と輝く傑作文学とギャルゲーをいっしょにするのは、さすがに紫式部に失礼なような気がするよ、あおいちゃん。
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