第一章 都のはずれ

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「去年は、宇治十帖の昼ドラかよってくらいのドロドロ三角関係やったな」  あーちゃんは、わたしが何もしゃべらないのであおいちゃんの話に合わせてあげる。ちなみに宇治十帖というお話は、薫の君と匂の宮に迫られる薄幸の美女浮舟が、二人の間をふらふらするお話。  ハイスペック平安男子が、源氏物語の中で最も最下層ヒロインに、二人してメロメロって。光源氏の死後の番外編的なお話であっても、それでいいの? 光源氏のキラキラ恋愛譚を楽しんでいた読者の期待を裏切るって、紫式部は躊躇しなかったのだろうか……なんていらない心配をしてしまう。  まあ、恋愛経験ほぼほぼゼロのわたしにとって、入れ食い状態の光源氏の恋愛でも、愛憎渦巻く三角関係であっても、皆目わからん。  平安時代の恋愛は政治的に結びついていたらしいけれど、もしわたしが貴族だったら恋に精を出すよりも宇治で隠遁性格していた方が楽しいな。  恋愛なんて、するもんじゃない。 「そういえば、宇治十帖の薫の君って薫とおんなじ字やん。薫の君は薫がやったらおもしろかったのに」
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