第一章 都のはずれ

14/53
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/241ページ
 ご冗談をあおいちゃん。そんな舞台に立つとか絶対に無理です。英語部って英検の勉強でもするのかと思ってクラブ見学もせずに決めたわたしが悪いけれど、まさか英語劇をする部活だとは思わなかった。  そもそも家事に忙しいので部活に入らないつもりだったのに、てっちゃんに何か入った方がいいよって言われて入っただけなのだ。 「今年は誰が中入るんやろな、未来くん」  あーちゃんが、突然思い出したように言った。 「毎年、生徒会の誰かって決まってるやん。しっかし十月ってまだ暑いのに着ぐるみ着るのかわいそうやな」  未来くんとは二頭身の牛若丸らしきゆるキャラで、昔盛大におこなわれたイベントのキャラクターだ。そのイベントが終わったあと、なぜかうちの高校に払い下げられ、文化祭で場を盛り上げるのに登場するのが伝統になっている。 源氏物語の英語劇だったり着ぐるみだったり。高校の文化祭というものは、コンセプト不明の伝統が渋滞している。  あおいちゃんがしみじみ汗だくになって着ぐるみを着る生徒会役員に、心底同情していると、
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!