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「源氏の話に戻るけど、二人の年の差って八歳やろ? 十年たって、二十歳と二八歳やったら全然ありやで。薫もそう思わへん?」
あーちゃんが、ずっと黙っていたわたしに話をふる。突然すぎて、思わず針で指をさしてしまった。指をくわえながら「そうだね」ともごもご返す。
でも、紫の君は源氏のことやさしいお兄さんって思っていたのに、ある日突然妻にされちゃうんだから、それはそれでどうよって思うけどなあ。
紫の君にしたら、信じていた人に裏切られたって思うよね。今ならトラウマものだ。
「そういえば徹舟先生っていくつなん?」
なんでこの話の流れでてっちゃんが出てくるの。わたしは別に拉致られてないし。若く見えるけれど、結構年くってるんだよ。
「……三五歳」と脳内のセリフをすべてはぶき、シンプルに答えた。
「わたし、徹舟先生となら十七ぐらい離れてても、全然ありやわ~」
どこかに向かって妄想をふくらませているあーちゃんの横で、あおいちゃんが耳打ちする。
「薫、今日三面やろ。ここはもうええし、あーちゃんが気いつく前に行き」
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