第一章 都のはずれ

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 入学式でてっちゃんを見かけてから、あーちゃんはお熱なのだ。学校で見るてっちゃんはたしかに目立っていた。  金髪が映える深い青磁色の長着(ながぎ)に、揃いの羽織を着た和装姿だったのだから。普段美意識なんてどこへやらという生活をしているくせに。外出時のみ、極小的な美的センスを発揮する。つまり外出着がすべて和装なのだ。  これには小学生の時から苦労させられた。どっからどう見ても和顔のわたしの保護者が、金髪和装王子なのだから。  おまけに平日でもふらふらしている。参観では、わたしのクラスだけお母さんたちですし詰め状態。運動会では、子供そっちのけでてっちゃんの写真を撮りまくるお母さん。その横には半笑いのお父さんの姿がそこここに。  できるだけ目立たないよう端っこにいたいわたしとしては、てっちゃんが手を振ってくれるたび、針の筵を全方向からかぶせられる気分だった。  だから高校では、極力てっちゃんが学校にくることを遠回しに断り、わたしは存在を消して空気に徹していた。  三年生になった現在でも、状況はかわらない。あまり誰からも話しかけられないが、人見知りのわたしにはありがたい。
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