第一章 都のはずれ

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 なのでうちは貧乏家庭である。てっちゃんの着物は、すべててっちゃんのおじいちゃんのおさがりなので、ただなのだ。おじいちゃんはイギリス人の学者先生で日本の大学で教鞭をとり、日本人のおばあちゃんと恋に落ちたそう。  なので日本の男よりも背は高かったみたいだけれど、いかんせん昔の男。着物のお直しは、近所のおばちゃんが、てっちゃんならって、ただでしてくれる。  食の細いてっちゃんとわたし二人分の食費は、ひと月辺り四万から五万の間で押さえている。一番の出費は教育費だった。高校の授業料がただと言っても、模試代やらなんやらで結構な金額になる。そして、それが大学ともなると……。 「最新刊の『骨と青春』も読みました。いやー今作もしびれるメタファーのオンパレードで、ファンの間で考察が盛り上がってますよ」  先生、あの本も読んだんだ……。ヤンデレヒロイン夕子さんと、ドSな光くんが繰り広げる怠惰な青春の日々。  純文学的香りをまぶしてあるけれど、二人がやってる行為はほぼほぼハードSM。ハードSMなんて言葉、てっちゃんの本で初めて知ったんだから。
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