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第一章 都のはずれ
ハチワレ猫のミヤの騒々しい鳴き声が、二階から聞こえてくる。
わたしは階下の台所でお弁当用の豚の生姜焼きを、フライパンの上でせわしなく菜箸でつついていた。油断するとすぐに焦げ付いてしまう。
ここは慎重にならねば、グラム百円を切る豚こま肉をおいしく食すために。そんな切羽詰まった女子高生の朝の貴重な時間、猫にかまっている余裕なんかない。
野生のプライドを捨て、みゃーみゃーと媚を売るような泣き声で何かを訴えているようだけれど、すまないが勝手に鳴いていてくれ。
わたしの意識はフライパンの中へ全集中する。節約レシピのど定番、豚こま肉は少々固く焼き上がるのがたまにきず。その硬さをなんとかしてくれるのが魔法のお粉、片栗粉。
玉ねぎや酒類に付け込んでも柔らかくなるが、そんなてまはめんどくさい。肉に味付けをする時に、片栗粉もいっしょに混ぜればあら不思議。お安いお肉をコーティングしてくれて多少硬かろうが、つるんとした触感に騙されること請け合いである。
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