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キミと僕は平行線
今日も僕は、キミの横顔を盗み見る。
今日は何故か、悲しそうな顔をしていた。
何がそんなに悲しいのか、聞いてみたい気持ちでいっぱいだった。
ただ、僕はキミと喋ったことがない。
キミの声も、知らない。
だから、急に聞かれても嫌われるだけ。
僕は隣の席のキミの横顔を見つめていた。
ただ、見つめていた。
「…お前、ほんとユナのこと好きだよな!」
不意に、前の席から声がかかってきた。
ユナ。たしか、キミはそんな名前だったはずだ。
「好き?僕が?」
「ああ。ずーっとユナの顔見ちゃってさぁ。まあ確かにユナ、可愛いもんな!頑張れよ、山田!」
……というか、この前の席の男に名前を教えた覚えはないんだけどな。
それに、僕はキミに恋愛感情を抱いているわけじゃない。
だって、僕とキミは決して交わることのない平行線世界で生きている。
キミは魅力的だ。
でも僕は、何もない。
生まれた時から、違う世界にいたんだ、きっと。
だからキミには触れられない。
だから僕は、キミの横顔しか知らない。
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