失恋の痛みは

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失恋の痛みは

 僕は一応、美術部に入っている。  〝一応〟というのは、僕以外にほとんど誰もいないからだ。  部に顔を出しているのは僕と部長・新川先輩と一年生の鈴木さんだけ。あと2人ぐらいいるらしいけど、いわゆる幽霊部員というやつなのだそう。  僕は今日、コンテストに出すための絵を描いていた。  だから帰る時には、もう空は藍色に染まり始めていた。  僕は、誰もいない静かな階段を降りていた。  すると、どこからか人の声が聞こえてきた。  声の高さからして、女子だろう。  まだ学校にいたのか。まあ、僕もだけど。  僕は気にせず階段を降りていった。  だが、その話し声はどんどん大きくなっていき、ついにはすすり泣き声まで聞こえてきた。  流石に、泣いてる女子のそばを素通りするのは気まずいだろう。僕は泣き止むまで、階段の影で待つことにした。  でも、何故か気になる。  見ず知らずの女子のはずなのに、放っておくことが、できない。  仕方なく泣き声のする方を見ると、そこには3人組の女子がいた。  どうなら、泣いているのは真ん中の女子みたいだ。 「…私じゃっ、だめ、だったのかなぁ?」 「そんなわけないじゃん。多分、田口の見る目がないだけだよ!」 「田口、おっぱい大きい人しか好きじゃないって、聞いたことある」  田口っていうのは…確かあの前の席の男の名前だったはず。  おそらく、泣いている女子は田口にフラれて、失恋の痛みに悶えて泣いているのだろう。  それを、後の2人が慰めている。 「はあ。ほんとムカつく!なんでユナをフッたのよ⁈ほんと信じらんない!」 「田口って、結構女子にモテるけど、胸しか見てないらしいよ」 「は?サイテー!」 「ちがうの…私が、可愛くないからだよっ…田口くんは、悪くないっ!」 「いや、ユナめっちゃ可愛いから。田口の目が腐ってるんじゃないの?」  あの田口っていうやつ、そんなにクズなのか。  そういえば、この泣いている女子は誰なんだろう。   「あんなやつ、忘れなよ!ユナは可愛いからすぐに彼氏できるよ!」 「うん…っ!ありがとう…」  どうやら、今から帰るみたいだ。  僕は女子の話を盗み見していたとバレないように、泣いていた女子の少し後から階段を降りた。  そしてふと、思い出す。  …ユナ?  確か僕がいつも絵を描いていたキミは、ユナという名前だった。  じゃあ、さっきの泣いていた女子は、キミだったんだ。  ということは、キミはあの前の席の男ーーーー田口が、好きだったのか。  …なんだか、胸がモヤモヤした。
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