何度でも

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 目を開けると、そこは先程までと変わりない控室だった。  夢を見ていたのか、こんな時に? 僕は自分の間抜けさに少しだけ笑ってしまった。  今日の試合で勝てば、総合格闘技の世界王者は僕のものとなる。  ついにこの日が来たというのに夢だって? 「やあ、マイケル。調子はどうだい」  プロモーターのデビットが悪趣味な金属のアクセサリーをじゃらつかせながら控室に入ってきた。  いけ好かないところもあるが、今日のビッグマッチが成立したのは彼の功績に寄るところが大きい。  口八丁とはまさに彼の事だろう。 「やあ、デビット。上々だよ」  僕の言葉に、デビットは嬉しそうに笑った。 「どうやらそうらしいな。タイトルマッチを数分後に控えたルーキーとは思えん落ち着きだ。もちろん、嬉しい事だがね」  うたたねをして、夢まで見ていたと言ったらデビットはどういうだろう。 「だがな、マイケル。相手は世界チャンプだ。何もかもが格上ってやつだ。お前は若さと勢いだけで去れを打ち砕かにゃならん。新進気鋭の若者がオールドチャンプをねじ伏せる。そんな姿を観客も期待してる。俺はな、それが絵空事だとは思えないんだ。だからこそ、このカードを組むのに全力を注いだわけだ。それを裏切らないでくれ」  そう言って、デビットは僕の肩をバチンと一つ叩いた。  痛くないわけじゃないが、大した威力もない。だが、かけられている期待を裏切るわけにも行かない。  
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