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僕の名前がコールされる。会場を埋め尽くす大観衆が大声を上げる。
空気の震えを肌で感じ、僕の体は先程までとは違う震えに支配された。
「ビビってんのか?」
「武者震いさ」
「その意気だ、頑張れよルーキー!!」
群衆の間を通り、ロープに囲われた四角い闘技場へと僕は足を踏み入れた。
その瞬間襲い掛かってくる重たい空気。これがタイトルマッチの空気ってやつか。
対角線のコーナーに、タイトル奪取後二十戦無敗のチャンピオンが立っている。それほど大きな体つきはしていない。
だが、全身から立ち上るオーラが、何倍にも見せてくる。
「クソッ、飲まれてたまるもんか!!」
胸を二度ほど叩き、自分の体と心を奮い立たせる。彼の腰に巻かれているベルトだけを見るんだ。
あれを手に入れるため、僕は血のにじむ練習をしてきたのだから。
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