0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
二十戦無敗チャンピオンの名は伊達じゃなかった。
スピード、テクニック、パワー、全てで上をいかれている。
殴ろうとしても蹴ろうとしても、そして組合に持ち込もうとしても、まともには当たらなかった。
僕のがむしゃらな攻撃は、ことごとくよけられ、受けられ、あしらわれた。
「君は強い。もっと強くなるだろう。だが、まだ私の敵じゃない」
「黙れ、僕は今日あんたを倒す。新しいチャンピオンは僕だ」
「やれやれ、その決意だけは立派なことだな。だが、そろそろ引導を渡すとしよう」
「クソッたれ!!」
闇雲で出した右のパンチに対して、チャンピオンは冷静にカウンターをとってきた。
一撃必殺の掌底が来る、と思ったときには僕の右頬にチャンプの掌底がめり込んでいた。
脳が揺れるぐにゃりとした感覚や、脱力感、浮遊感。
初めて戦うはずなのに、そのすべてに覚えがあった。
突如フラッシュバックする記憶。チャンピオンも驚いたように目を見開いている。
「美玖ちゃん?」
「隆君?」
こんな事ならもっとちゃんとチャンピオンの顔を見ておけば……。
その直後、僕の視界は暗転した。
最初のコメントを投稿しよう!