何度でも

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「へへへ、今日はこいつで遊ぶか」  男たちが立ち止まったのは、僕の前だ。  まともな遊び方をするはずがない。  僕の命は今日までのようだ、と覚悟を決めた。 「それじゃあよ、スイング力対決と行こうぜ」  そう言って、金髪男は担いでいたバットを仲間たちの方へと差し出した 「誰から行く?」 「じゃあ、俺から言っていいすか?」  毛糸の帽子をかぶった唇ピアスの男が手をあげた。  周りから拍手が起こる。 「よし、やりな」  バットを受け取り、嬉しそうに何度か素振りする唇ピアス。  店主から奪ったのであろう鍵で僕の一部が開けられ、金を入れることなく稼働させられる。 「ぶっこわれろぉ!!」  ぷぅん、と振り回されたバットがパンチを当てる部分に咲くれるする。  その瞬間、奇妙なことに僕の中にフラッシュバックするものがあった。  あるはずのない脳が揺れ、景色がゆがむ感覚。脱力感と浮遊感が僕に襲い掛かった。 「美玖ちゃん?」 「隆君?」  どこかからそんな声が聞こえた。 「次は俺だぜ!!」 「やっぱり美玖ちゃん?」 「隆君なの?」  どこだ、どこから聞こえる? 「じゃあ、次は俺だな」 「美玖ちゃん?」 「隆君、隆君!!」  すぐそこにいるはずなのに……。 「ちっ、なかなか壊れねぇな。最後は俺だ」  金髪のスイングは他のメンバーのどれよりも鋭く、強かった。 「美玖ちゃっ……」 「隆くぅぅぅぅん!!」  そうか……美玖ちゃんはバット……。  美玖ちゃんに壊されるなら本も……う……。
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