少年

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「、、、、、、ゅ」 どれくらい時間が経っただろう 実際は1分くらいだったのかもしれないが部屋を包む静寂からか、私には1時間くらいに感じた それでも今出せる精一杯の勇気を振り絞って私は最初の一文字を声に乗せた その声は、少しでも風が吹けば消し去られてしまうほどの小さな小さな声であったが鈴木陽はちゃんと聞き取ってくれた 「わかった。ゆ だな。そうだなー、じゃあこれからおまえのことはゆーって呼ぶことにする」 ゆー 誰かにあだ名をつけられたことなんて今まで無かった 私は鈴木陽をなんと呼べばいいのだろう ずっと鈴木陽って呼ぶのは長いよね なら鈴木? でも鈴木にしたらこの家にいる人たちみんな鈴木か あっ、でも私はずっとここにいるわけではないのだから鈴木でもいいのかな 「俺のことはハルって呼んでくれな」 陽はまた私の考えてることをあてる あっ、陽が考えを呼んでるんじゃなくて、私の顔に書いてあるって言ってたっけ? そんなことより名前だ 今まで人の名前なんて読んだことない 私は少し緊張しながら、一方で少しワクワクしながら陽の名前を口にする 「ハル?」 「おう!ハルだ!」 ハル、ハル、ハル 今日初めて人の名前を呼んだ 緊張したけど、なんだかあったかい ハルの名前のおかげかな 「あっ、あとゆーは何歳?」 「16」 「おっ、じゃあ俺と一緒だな!」 「うん」 そっか ハルと同級生か もし私が普通に高校に通えてたとしたらハルと一緒のクラスに慣れたりしたのかな 高校のどんなところかはわからないけど、ハルと同じクラスだったら楽しいのかな まあこれもタラレバの世界 実際の私は高校どころか小学校すらまともに通っていないのだから
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