場違い

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場違い

この少年も私のことを殴るのだろうか それともあの人たちの仲間で、このままどこかに連れて行かれて誰かに殴られるのだろうか やっぱり着いてこなければよかった 「ねぇ」 「んー?」 「これから会う人ってどんな人?」 「んー。俺の家族」 「そう」 「うん。そう。」 こいつの家族 どんな人たちだろうか 殴られるだろうか まあ、この少年には色々助けられた 恩を受けた分殴られるのは当然かもしれない 「もうすぐ着くぞ」 「うん、、、」 考え事をしているといつのまにか住宅街に入っており、どこにでもありそうな普通の一軒家に辿り着く 「よし。とーちゃく」 「あっ、ありがとう、、、 ここからは自分で歩く」 流石にこれから少年の家族に会うというのだからおぶられたままというわけにはいかない それを感じ取ってくれたのか少年はそうかと言って地面に下ろしてくれた それから慣れた手つきで玄関を開ける 「ただいまー」 少年が間延びした声でそう述べると 「おにーちゃん!おかえりー‼︎」 と幼稚園児くらいの可愛らしい男の子が玄関に駆けつけてくる 「おー。優ただいま。母さんいるか?」 「いるよ!ちょっと待ってね。おかあさーん!」 優君というのだろう 優君は私に気付いた様子もなく、少年の母親を呼びにリビングに走っていく 「弟さん。かわいいね」 「だろ?」 少年は愛おしそうに優君が走っていったリビングを見つめる 私は途端にここから逃げ出したくなった ここは私がみてきた世界とかけ離れすぎている 私は今までこんなふうに見つめられたことは無かった いや、もしかしたら両親の仲が良かった時はあったのかもしれない でもここは私がいていい世界じゃない 胸が苦しい 憎らしい 恨めしい 、、、羨ましい、、、 「大丈夫か?」 「、、、へっ?」 「かーお。泣きそうな顔してる」 「そっそんなことない!勝手に見るな!!」 どうやら私の感情は顔に表れていたみたいだ 表情なんてとっくの前に無くなったと思っていた 実際少女の表情はほとんど変わってはいなかった 他の人が見たら微塵も動いていない、少女自身も自分の表情が変わったことに気づかないくらいの微妙な変化に少年は気がついたのである 「おにーちゃん!お母さん呼んできたよ!」 「おう、ありがとな」 そう言って少年は屈んで優君の頭を撫でる 私はしばらくその様子を何を思うでもなく、ただただ見つめていた
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