第1話 暫定ヒロインなの、知っていますからね

1/4
653人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ

第1話 暫定ヒロインなの、知っていますからね

 この国――フリデン王国では人は生まれる時に忘却の輪をくぐり過去世を忘れる――忘却魔法をかけられると信じられている。それはこの世界に生まれ変わるという概念があるということだ。ただ、ごくまれにその魔法にかからない者、かかっても解ける者がいる。ここには前世の記憶を持つ者が存在した。  そのまれに自分は当てはまるらしい。17歳になる半年前、リティア・デル・オリブリュスはどうやら魔法が溶けてきたらしいということに気が付いた。らしいと他人事の様に思うのは自分の新たに現れた記憶がとても曖昧なものだったからだ。  ある日、自分の過ごしてきた16年ほどが急に作り物の様に感じられたのだ。なぜか、どこか非現実な、聞いたことのある話を俯瞰して見つめる自分がもう一人いるような気分だった。魔法は本当にあるのだろうか。この人生で実際に魔法など見たことはなく、“魔法”という言葉は隣国の驚異的な軍事力の比喩として使われるくらいだ。  魔法、解けてきちゃったのかしら。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!