第7話 疑似恋愛

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「それに関しては、一切の疚しいことはありません」  言うなり、きゅっと口を結び凛々しい表情のウォルフリックに、レオンとランハートは顔を見合わせ、吹き出した。ウォルフリックはそれをなぜ笑われたのかわからず、不服そうに見ていた。 「すみません。シュベリー卿、本当に疑っていません。あなたとのことも、リティのことも信じている。それに、あなた方はそんな人ではない」  ランハート身を正してウォルフリックに話しかけた。 「ええ、誓って」  ウォルフリックは自身の胸に手を当てた。 「そうそう。疚しくないんだから構わないさ。みんな、ちゃんとわかってる。だだ、まぁ男女である限り触れるのはやめよう。俺も今後は気をつける」  レオンが自身の行動を含めて忠告した。 「ええ、ごめんなさい。気を付ける。もっと、ヴェルター殿下の婚約者であることに自覚を持たなくちゃ」  ずっと婚約者として教育され、生きてきたのに、気が抜けてしまっていたのだろうか。リティアは自身に呆れ、落胆する気持ちだった。 「俺たちは責めたいわけじゃなくて、リティ。レオンの言う通り、誰も君たちの関係を深読みしたりしてないさ。むしろ、微笑ましいほどに清爽としている。だけどな、まぁ、気にする奴もいて、だな」  ランハートは言葉尻を濁した。 「……どういうこと? 誰も気にしないんじゃないの? 」  リティアはランハートの矛盾を指摘したが、ランハートは苦笑いで返しただけだった。わからないリティアはレオンの顔を窺ったが、レオンもランハートと同じように笑うだけだった。  ウォルフリックは、「奴……」と呟き、顎に手を当て考えていたが心当たりがあったのか、あっと小さく呟き顔を上げた。 「大丈夫です、罪にはなりません」  ランハートがウォルフリックにそう言い、リティア以外はわかっている様子だった。
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