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「もうこんな時間ではないか。私はこれで失礼致します。では。では。では」
ウォルフリック赤くなったままその場をそそくさと去って行った。途中オイルが気になるのか手袋をはめるのに立ち止まっていた。ぶっとレオンが吹き出し、それを戒めたランハートの肩もわずかに揺れている。
「“では”って何回言うんだよ。かっわいいな。あんな人だとは思わなかった」
「ああ、なんだろうな。彼を見ていると胸がぎゅっとなる」
ランハートはレオンに同意し、頬を染めて心臓あたりをぎゅっと掴んだ。
「わかる。そうなの、そうなのよ! 彼を見ていると応援したくなっちゃって、疑似恋愛が味わえるの」
「疑似恋愛? 」
レオンとランハートはリティアの方を見つめた。リティアは、気持ちがその疑似恋愛で昂ったままに言った。
「そう。私も恋をした気分を味わえるの。あの喜びが溢れた瞳を見た? 」
「ああ、そうか。人の恋愛話は面白いよな」
レオンはすんなり同意してくれたが、ランハートは複雑な笑みを浮かべた。
「リティ、別に疑似ではなく……」
ランハートの言葉の意味がわかったのか、レオンも取り繕うような笑みに変わった。
「いいえ、私は今はまだ恋愛がが出来ないからこうやって話を聞くのが楽しくって」
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