第7話 疑似恋愛

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 二人は顔を見合わせて恐る恐るという風に口を開いては閉じた。普段は何も考えてないかのように軽口をたたくレオンも、慎重に言葉を選んでいる。頭の回転が速いランハートさえすぐには言葉が出てこない様子だった。リティアは二人の顔を交互に見ながら、なぜ変な顔をしているのか首を傾げた。が、自分の言葉を頭の中で反芻するうちに失言だったと慌てた。 「あ! 私は、物心ついた時から結婚相手が決まっていたでしょうだから、片思いというのを経験したことが無くて」  リティアは慌てて言い訳めいた補足をしたが、二人は真顔で「俺もない」「俺もだ」と頷いた。 「レオンもランハートも引く手あまたでしょうに。まだ、話はまとまらないの? 」  貴族の結婚は契約結婚が主で、いわば家同士の利害の一致だ。 「話は、親がまとめるんじゃないか。知らないけど。俺は来るもの拒まず、去る者追わず。だから、片思いなんてしたことないね」 「そうだった、レオン、あなたってそうだったわね」 「まあね。次男の俺に継ぐ爵位もないし、もう少し好きにするかな」 「じゃあ、ラン、あなたは? 」  リティアがランハートに尋ねるとランハートはふん、と鼻を鳴らした。ランハートの自信に満ちた顔はリティアは嫌いでは無かった。 「近々正式に婚姻の申し入れをするつもりだ」 「ラン!! どういうこと、ヴェッティン家からどこの家門へ? 家同士が決めたのよね? どんな方なの? 」  リティアは矢次早に質問をした。ランハートの得意げな顔の訳を早く聞きたかった。レオンはすでに知っていたのか、横で白い歯をきらめかせて笑っている。
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