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「そう。自分の好みを形成する時期であるのだろう」
「あ、わかるな。それ。母親、親族、講師、幼馴染……級友」
レオンも同意した。リティアはなるほどと思う。異性を意識するということか……。
「最初の恋、かぁ」
「さ、行こうか。今日は殿下のところには? 」
リティアは緩くかぶりを振った。リティアはそっとヴェルターの執務室のある方向へ顔を向けた。
「そっか、ヴェルターも忙しいからな」
レオンはリティアを立たせるのに手を差し出した。レオンが申し出たエスコートを断ると、リティアは馬車へと乗り込んだ。
馬車の中、リティアは窓の外を見ていた。美しい庭園には何人か紳士の姿も見える。リティアとそう変わらない若いどこかの子息。宮廷に入ることが許されているということはそれなりの家門である。リティアは「はぁ」とため息を吐く。
何が、ヒロインだろうか。ヒロインにありがちな特徴がリティアには全く無かった。暫定でいる時にも無かったのだ。
「全然モテない」
リティアの呟きは馬車の走る音でかき消された。……別に、いいのだけど。心中複雑だった。
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