第7話 疑似恋愛

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 初めはわざわざ宮園で会うなんて自分への当て付けかとまで思ったが、自分のことなどリティアの頭の隅にもないだろう事を知って余計に落ち込むことになった。ヴェルターは見なければいいのはわかっているが、敢えて見える所へ体が動いてしまうという矛盾を繰り返していた。  ウォルフリック・シュベリーとリティアは何度か庭園で逢瀬を楽しんでいた。(ようにヴェルターの目には映った)リティアの馬車がこの王太子宮側に停まると、優秀な侍従たちがヴェルターに訪問があるかもしれないと、いつリティアが来てもいい準備をするのだ。ヴェルターはリティアが来たことを嫌でも悟ってしまう。わずかな期待が裏切られるこれほど虚しい事は無かった。……少し前、リティアが宮中でウォルフリックについてあちこちで尋ねているらしいと耳にした。噂にも満たない小さな情報だったが、ヴェルターは聞き逃さなかった。  窓際に立って、庭園を見下ろす。ヴェルターの目はどんなに遠くにいてもリティアを一瞬で見つけられる特殊機能がついていた。この日も横には、ウォルフリック・シュベリーの姿があった。ヴェルターは、この時初めて彼も笑うのだと知った。はにかむような笑顔は同性からみても大層に魅力的で、至近距離であの顔を向けられると、たまらなくなるに違いなかった。そこで目を逸らしていればよかったのに。ヴェルターは深く後悔をした。  リティアが、リティアの方からシュベリー卿の手を取った。  ヴェルターの目はそこから貼り付けたように動かなくなってしまった。ちょうどそのタイミングでノックされたドアに正気を取り戻した。
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