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ミリーをやり過ごせてホッとしていたリティアだったが、翌日になって安易な誤魔化しをしたことを後悔することになった。
「失礼します、お嬢様。夕べのうちに声を掛けておきました」
ミリーに続いて部屋に入って来たのはマダム・シュナイダーだった。
「ご無沙汰しております、リティア嬢」
全くご無沙汰では無かったが、侍女の優秀さとマダムの流れるような挨拶にリティアはおもむろに立ち上がり、身を委ねるしかなかった。彼女が来たという事は、新しいドレスを作るということなのだ。
「王太子殿下と宮中でお会いするときにお召しになりたいそうですわ」
何も言ってないのにやたらと王太子だとか宮中だとかを強調するミリーを咎める気にもなれず、されるがままだった。
「まああぁぁあ。なんて素敵なんでしょう。それでしたら男性の視線を意識したものはいかがでしょう。レディはデコルテが大変美しいのでいつもより少し……」
マダムは話しながら出来上がりが見えているかのように見えないドレスのラインを拾っていく。
リティアはコウモリも避けるほどの高音を出すマダムに心の中で顔をしかめながらうんうん頷くミリーを目の端で捉えた。事実、王室も御用達のデザイナーであるマダムに任せておけば間違いは無かった。例えば、宮中にふさわしくないドレスなどははなから除外してくれるのだ。
ドレスの打ち合わせが終わりマダムが部屋から出て行くと、ミリーは満足そうに微笑んだ。
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