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「王太子殿下も褒めてくださいますよ」
「……そう、だといいんだけど」
「ええ。あのドレス姿を見て褒めない男性などいらっしゃいませんわ。ですが、殿下が何ておっしゃったかは教えて下さいね」
ヴェルターならどんなドレスでも礼儀として褒めるだろうけれど、そうは思っても口には出せず、このドレスが出来上がれば宮廷に行った際は王太子に会わなければならないではないか。リティアは面倒なことになったと思ったが、ミリーに心情を悟られないようにはにかんでみせた。そんなリティアの演技はミリーを騙せるほど上達していた。
ミリーは、ほう、とため息をつき恍惚とした表情を浮かべた。
「最近あまり王太子殿下のお話をされないものですから心配していましたが杞憂でしたわね」
リティアはミリーの鋭さにドキリとしたが、それも何とかやり過ごした。――危ない。さすがはミリー。今後はもっと気を付けなければ。ミリーに婚約破棄のことが前もって露見してしまうと大変なことになりそうだわ。
もし、婚約が破談になったら。リティアには熟考する必要があった。二人の結婚は二人だけの問題ではないからだ。気持ちだけではどうにもならないことではある。
でも、とリティアは思う。婚約破棄によって起こりうる可能性の不条理をミリーのいないわずかな時間で挙げる。何とかなるはずだ。
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