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「リティ。君はアンとは違う意味でみんな驚いたと思うよ」
「あ、ええ。ありがとう。もう腕が痛いのだけどね」
「……大丈夫かい。もし、酷く痛むのなら……」
リティアはヴェルターの心配して伸ばした腕をすっと避けた。ヴェルターの顔がわずかにひきつる。
「違うの、触ると痛いのよ。ただの筋肉痛。随分早くきたみたいで」
リティアは言い訳すると、ヴェルターはうん、と頷き今度は躊躇わずにリティアの腕に触れた。リティアは驚きでビクリと肩を震わせた。それが、痛むと思われたのか、ヴェルターは眉間に皺を寄せた。
「痛むの? 」
「あ、思ったより平気。きっと明日の方がもっと痛くなるんじゃないかしら」
ヴェルターのリティアの腕に触れる力は弱かったが、リティアは痛がったふりをするしかなかった。なぜ、無意識にヴェルターを避けてしまったのか。いたたまれないような気持ちがヴェルターを前に何度もやって来る。放っておいてほしいような気分だった。
「リティア、平気? もう少し子供たちに稽古をつけて欲しいのだけど、あなたは休んでいても構わないわ。ごめんなさい、慣れないことをさせてしまったわね」
アンまでが心配そうにリティアを見つめる。ヴェルターにも見つめられて、リティアはますますいたたまれない気持ちになった。
「もう、運動不足で情けないことが子供たちにも悟られてしまうわ。平気よ。恥ずかしいからやめて」
リティアは二人の綺麗な顔に迫られて逃げる思いで顔を覆った。リティアの憔悴した様子にアンがふっと笑った。
「ごめんなさい。大袈裟にしてしまったわね。では少し休んで」
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