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休息後、ヴェルターとペールは引き続き子供たちに剣術を教えていた。時折、ペールがヴェルターに熱視線を送っていて、ヴェルターは苦笑いで流していた。
「ペールったら、力が有り余っているのね。彼の体力を全部ヴェルターに引き受けてもらうわけにはいかないわね。どうしようかしら」
「ふふ、ペールは本当に剣が好きなのですね」
ペールはまだまだ体力が有り余っているといった感じだ。ペールに応対できるのはヴェルターしかいないのも事実で、衛兵を呼ぶわけにも行かないだろうとリティアが周りを見回した時だった。休暇とはいえ、急用があったのかマルティンがやって来た。そうなると、ヴェルターは席を外すことになるだろう。
ヴェルターは「補佐官のマルティン・アルデモートだ」とアンとペールに一応紹介した後、マルティンを頭の先からつま先まで見た。にっこりと笑うと
「いや、知っての通り彼もただの国民であるマルティン。実は彼は、剣術の天才だ」
と言い直した。マルティンがポカンとし、わくわくしたペールを見てサッと顔色を変えた。
「な、何の冗談ですか、殿下! 」
「殿下? まさかこんなところに王子が? 」
「こんな所って、王室の宮殿、別宅でしょうが。ああ、あああ! 私が体を動かすことは全て苦手としていることをご存じなくせに」
「はははは! 今日は祭りだ。意外なことをやって見るのも楽しいぞ、マルティン」
そうだろうか、と思ったのかマルティンはペールを見上げたが不穏な予感に顔を歪めた。マルティンはどれだけ否定しても受け入れて貰えず、嬉々としたペールに半ば引きずられるように修練場へと向かった。
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