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アンはアデルモの問いに苦笑いで返した。ヴェルターとリティアははっと顔を見合わせた。
「やはりな、結婚というものは、王家に生まれたからには自由にはならず責任や義務だと、私にも気持ちはよくわかる。だが、君に我慢はして欲しくない。意見は言ったって構わない。君たちは仲の良い姉妹ではないか」
アデルモが必死にリリーラを慰める様子に、……こんなに鈍い人だとは……と、この場にいる者すべての顔が同じになった頃、アンが口を開いた。
「……私たちはこれから話さないといけないことがありますので先に失礼いたしますわ。行きましょう、ペール」
ペールは怒られた大型犬のようにしょぼくれたまま一礼してアンと出て行った。
「……叔父上、僕たちも、そろそろ二人になりたいんだ。いい? 」
「あ、ああ。構わない」
ヴェルターはリティアを促し、リリーラとアデルモを二人残して部屋を出た。
「リリーラ、君も明日帰るのだからもう休んだ方がいい」
部屋の中からアデルモの声が聞こえてきて、ヴェルターはわざとらしく肩をすくめた。
「まさか、叔父上があんなに鈍感だと思わなかった」
「……私も。まさか、本当にリリーラをこのまま寝かせるつもりかしら」
「明日帰るのに」
「明日帰るのに」
二人はどうすることも出来ず、後はリリーラに任せるしかなかった。どうやら、今回の訪問でリリーラに相応しい令息を見繕うつもりが、彼女がアデルモしか見えなくなってしまったようだ。
「お似合い……よね。すごく。でも、おじさまは年齢差に抵抗があるのかしら」
リティアがいうとヴェルターはいち、に、と指折り数えた。
「二歳差、だね」
「え……? 」
リティアは驚いて足を止めた。
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