687人が本棚に入れています
本棚に追加
「リティ。それは戸惑うのも無理は無いよ。別の人格が君の中に現れるわけだし、何より……。何より僕を意識するきっかけになったのなら僕は良かったと思う」
「ヴェル、ほんとうにごめんなさい」
「うん、いいよ。でも僕もシュベリー卿を見つめる君に嫉妬したから……。あれ、でも、僕は君の事をよく見てるからわかるんだ。リティ。君は確かにシュベリー卿に視線を送っていた」
「ええ。何だか初めて会った気がしなくて。安心する顔立ちで。あんなに整った顔立ちなのに、なぜか安心するの。懐かしいような……。それに、彼の話す言葉は心地よくて……。そう言えば彼、私が使った通じないはずの言葉をすんなり理解していたわ。どうしてかしら」
「……ひょっとするとリティ、君は生まれ変わる前はシュベリー卿の母上の国の人だったのかもしれないね」
ヴェルターは軽く思いついて言っただけだったが、リティアはそうかもしれない、と思った。長く悩んでいたことをヴェルターに打ち明けるとこんなにあっさり解決するのかとおかしくなった。
「ありがとう、ヴェルター。受け入れてくれて」
「当然だ。君は君なのだから」
「ヴェル……」
ヴェルターの顔がリティアに近づく。目を閉じたのは二人同時だった。ぎこちなかったキスにも次第に慣れ、ヴェルターのキスは手慣れた男のそれのように深く深くなっていった。リティアの身体が傾き、やがて天井を見上げるほどになると、ヴェルターはリティアを真下に見下ろしていた。
リティアが覚悟を決めた時だった。ヴェルターは満面の笑みで
「久しぶりだね。二人で一緒に寝るなんて」
と言った。
最初のコメントを投稿しよう!