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出会いを、なんて言えるわけもなく、リティアも苦笑いで返した。頭の切れるランハートにこれ以上口を開くと何もかも見透かされそうで、リティアは庭園を楽しむ素振りをした。気持ちを汲んでくれたのだろう。ランハートはそれ以上何も言わなかった。
「少し、雰囲気が変わったね」
「そうかしら」
リティアは泉から吹き出る水しぶきから、ランハートへと視線を移した。
「うーん。ドレスのせいかな」
ランハートは本当はそうじゃないとわかっていながらそう言った様子だ。リティアの微かな違和は説明しがたいものなのだろう。そっと瞳を覗かれるように見つめられれば、リティアは恥ずかしさから顔を赤くした。
ランハートのオリーブ色の髪は日に当たっていつもより明るく見えた。アンバーの瞳が好奇心でいたずらっぽく輝いた。
「別に何もないんだから」
「そっか、そっか」
からかわれたのだと気がつくとリティアはますます顔を赤らめた。リティアは記憶がぼんやり蘇ったあたりから誰かに雰囲気が変わったと言われることが多くなった。確かに婚約破棄などという考えに至ったのもそのせいでリティアにも自覚はあった。それをこの一瞬で見抜いてしまうランハートに警戒しながらも久しぶりのランハートとの時間は楽しいものだった。
無駄に綺麗な顔をしている。ヴェルター以外を異性と認識していなかったリティアは今更ながらに知的で冷静沈着で、それでいて子供っぽい所もあるランハートに、この人、モテるだろうなぁと思ったのだった。主に、娘の相手にと親から熱望されそうな将来有望な好青年だった。
「何か? 」
「いいえ、あなたって相変わらず完璧ね」
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