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「そ、そんなこと。んんっ、確かに素敵だけど、見ない顔だなって思っただけ」
「ああ、何でも彼の母上が東国の出身とかで、顔立ちが異国情緒漂う、雰囲気のある人だ」
「……」
「ま、あんまり見とれないで」
からかうレオンに言い返そうかと思ったが、言い返しても彼を喜ばせるだけだと判断したリティアは別の方法を試すことにした。
「そうね、でもあなたの方が素敵よ、レオン。太陽みたいなその髪、湖みたいに済んだ瞳、皆を明るくさせる性格」
あと、何だっけな。と、リティアは考えた。その悩む仕草にレオンはこれが反撃だと察したらしい。くすくすと笑った。
「わかったよ、リティ。じゃ、本物の太陽によろしくね」
レオンは紳士とはいいがたい幼い仕草でリティアに手を振ってシュベリー卿の後を追った。
「もう、賑やかなんだから」
呆れるやら、変わらない関係にホッとするやらでリティアは微笑んだ。
それにしても、さっきの。シュベリー卿の風貌は、なぜ懐古的な気持ちにさせるのだろうか。一瞬見ただけの彼の姿を思い出しながら長い廊下を歩いた。
すらりと高い背、一つにまとめられた肩より少し長い艶やかな黒髪は青みを帯びていた。切れ長の目から見えた深黒の瞳。……ああ、確かに素敵な人だった。あんな素敵な人なら一度見たら忘れないはず。
そんなことを考えているといつのまにか王太子の執務室の前に到着していた。今までの楽しかった気持ちが少しばかり陰ったが、リティアはすうっと息を吸って気持ちを切り替えた。ヴェルターに会いに来たのだから。リティアに気づいた侍従は当たり前のようにドアを開けてくれた。
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