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いつからだろう。
……いつからか、ヴェルターもリティアによそよそしくなった気がした。いや、明らかにそうなった。以前はこんな風にリティアが目の前にいて目を逸らすことなどなかったのだから。
なぜ?
リティアはそう気づいた瞬間、無意識にすっと顔を上げた。そこには同じくリティアを見つめていたヴェルターの光で照らされた水面のような淡い瞳があった。ヴェルターは心の内を隠すように微笑む。
「来てくれて嬉しいよ」
昔から、ヴェルターはリティアが訪問するとこう言った。同じセリフなのに、いつから心がこもらない社交辞令になってしまったのだろうか
「……本当に? 」
ヴェルターの瞳を窺う。少し瞳を揺らし、ヴェルターは
「もちろんだ」
と、頷いた。リティアはそれ以上追及しても無意味だと、微笑みを返した。リティアもヴェルターにとっても気まずい時間を二人の関係を対外的誇示するために使う時間は居心地の悪いものだった。
「リティ、今日のドレスはいつもと雰囲気が違うね」
「ふふ、あなたもそう言ってくれるのね」
「……あなたも? 」
ヴェルターが首を傾げた。
「ええ。ここまでランハートとレオンがエスコートしてくれたの。久しぶりに会えて嬉しかった。ランハートは相変わらず思慮深いし、レオンは底抜けに明るかった。つまり、二人とも相変わらずってこと」
「確かにそうだな。他には、誰かに会った? 」
「えーっと、レオンと同じ騎士の制服を着た……そうだ、シュベリー卿」
「ああ、黒髪の」
「ええ、そう。とても、」
とても、何を言おうとしたのだろう。リティアはそこで言葉を切った。ヴェルターとリティアの間に短い沈黙が流れた。
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