第3話 秀抜な男性と偶発的を装った何らかの力が働いた計画的出会い。

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「とても、何だい、リティ」 「とても、印象的な風貌だったわ。外国の血が流れてるのね、瞳も黒くて、シャープな顔立ちね。深い、夜のような」  じ、と黙ってリティアの話を聞くヴェルターにいたたまれなくなって考えなしに言葉を発したようだ。こういう時は取り繕おうとしてますます良くないことを言ってしまうものだ。わかっているのに繰り返す。 「あなたと真逆ね」  しまったと思った時には、ヴェルターの口角を上げただけの微笑みが残っていた。 「そうか。確かに、彼はそうかもしれないね」  言葉尻にわずかな消沈が感じられ、リティアはヴェルターが気落ちしないよう必死で彼を誉めたてた。元より、自らの言葉にヴェルターを下げる意味合いなど全くないのだから。 「単純にあなたの瞳や髪は白く、彼は黒いってことが言いたかったの。あなたが光なら彼は夜空のようで、どちらもとても素敵よ。ヴェル、あなたは今日も、いつも、すっごい素敵だわ」  いつのまにか前のめりになっていたらしく、ヴェルターは目を丸くしてリティアの勢いに体を後ろに反らしていた。ヴェルターははしばらく呆気に取られていたがくすくす笑い出した。 「ありがとう、リティ。でも大丈夫だよ。彼を見て、ハンサムじゃないなんて言う人はいないのだから」    リティアがヴェルターを褒めたのは、形の上とはいえ婚約者の前で他の男性を褒めてしまった罪悪感ゆえだと思われたのだ。リティアは顔を赤くした。  そうだ、何を勘違いしたのだろう。自分が他の男を褒めるとヴェルターが落ち込むと思っただなんて、何ておこがましいんだろう。リティアはそれに気づいて自らを恥じた。きまりわるく膝の上でもじもじと手遊びをしていると、ドアがノックされた。
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