第3話 秀抜な男性と偶発的を装った何らかの力が働いた計画的出会い。

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 ――ヴェルターは忙しいのに馬車まで送ってくれた。そして、別れ際に尋ねた。 「リティ、今日のドレスもマダムシュナイダーのデザインかい? 」 「ええ。どうして? 」 「いや、君にしては珍しいデザインだと思ったから」 「変かしら? 」  ヴェルターはすっと視線をリティのドレスに走らせた。清爽とした視線に、嫌な感じはしない。そして、にこりと笑った。 「まさか、執務室に入って来た瞬間、僕のレディはこんなに美しかったのかと驚いたよ」  ヴェルターの婚約者に興味があるように装う社交術に感服しながらリティアも微笑みを返した。一見して、周りに侍従以外の人はいなさそうだが、周りには仲の良い男女に映ることだろう。  ヴェルターはリティアの手を取り、甲に口を近づけると寸でで止める。 「君は今日もだけど、いつも、すっごい素敵だよ」  リティアの言葉をまねて、からかうことも忘れなかった。リティアはカッと頬を赤くしたが反論はしなかった。この国の全ての祝福を形にしたようなヴェルターの容姿は太陽の光を浴びて一層輝き、リティアは目を細めた。なんというか、なんというか、彼はやはり主役、なのだ。そう自分を納得させた。  馬車の中では前のめりのミリーに今度はリティアがのけぞっていた。 「どうでしたか、お嬢様! 王太子殿下は今日のお嬢様をご覧になってなんとおっしゃいましたか!? 」 「ええ、まあ、褒めてくださっ」  最後まで言い切らないうちにミリーはそうでしょう、そうでしょうとも、と何度も繰り返し満足した様子だった。そこからミリーはいかにリティアが素晴らしいか、をリティアに自慢し始めたのだった。リティアは婚約破棄に一番納得しないのはミリーなのではとこの世の全ての美辞麗句を浴びながら思ったのだった。  リティアは馬車の中までは、完璧に淑女をやってのけた。だが、自室に入りミリーが部屋から出て行くと盛大なため息を吐いた。ベッドの上、バタンと倒れてしまえば二度と動けなくなるのではないかと思うほどの疲労感がどっと押し寄せてきた。
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