第3話 秀抜な男性と偶発的を装った何らかの力が働いた計画的出会い。

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 ……疲れた。  リティアは目を瞑れば眠ってしまうだろうと天井の装飾を見ながらこの日に会った出来事を頭の中でまとめていた。  たくさんの人に出会った。ランハート、レオン、黒髪のシュベリー卿、アルデモート補佐官。そして。ヴェルター。 「男性ばかり……」  と呟いて、リティアは開眼した。もしかして……。思い当たる節があったのだ。  リティアはヒロインだ。少なくともリティアはそう思っている。ただ、悪女が登場するまでの暫定ヒロインだ。リティアの憶測だが、真のヒロインが登場するまでリティアがヒロインとしての役儀を引き受けなければならないのではないか。  リティアの予測が正しければ、年ごろになった今、リティアはこれからどこへ行っても秀抜な男性と偶発的を装った何らかの力が働いた計画的出会いが用意されるのだろう。そして、彼らはリティアに好意を示す。  それは、困った。その好意にこちらがその気になれば、後に現れた悪女に結局みんな心奪われるのではないか。ど、どうしよう……!  リティアはベッドの上、寝そべってるだけで激しくなった鼓動に、落ち着くように胸を撫でた。そうだ、あわよくば自分の相手を……と思っていたけれど、ヴェルターではなく他の人を好きになって、その人が悪女の想いを寄せることで嫉妬に狂うかもしれないということか。リティアは今気づけてよかったと安堵した。ランハートもレオンも優しいけど、いざとなれば王太子側の人間だ。どうなるかなんてわからない。二人だけでなく、今の人間関係だって、リティアが王太子の婚約者であるからこそもてはやされることも多いのだ。それが、婚約破棄となると、いくら公爵の娘であろうと、背を向ける者も出て来るかもしれない。
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